コースプランナーレポート                       柳下 大

 OMO2018、ご参加ありがとうございました。今年も天候に恵まれ春の訪れを感じる中、越生の里山を楽しんでいただけましたでしょうか。コース設定者からコースのコンセプトやルート、結果の考察などをレポートにまとめましたので、参考していただければと思います。

 

■フィールドの選定

 越生周辺では開催2回分のフィールドの広さがあると考えていて、今年は昨年使用しなかった大高取山周辺をメインとすることを事前に決めていました。昨年に比べると標高が低く藪が多い可能性や、古いO-MAPで大味な地形という印象を持っていたため、面白いコースが組めるか心配はありましたが、実際山に入ってみると植生に問題ないエリアも多く、のっぺりした地形が逆にナビゲーション課題になりうることに気づき、調査しながらこれは面白いエリアだという確信を深めていきました。当初は南側の鼻曲山付近も候補にしていたのですが、下見の結果大高取山周辺より地形や植生がタフだったので断念しました。そこでコースの長いエリートは大クスのある上谷エリアを昨年と逆回りにすることで、ちょうどA4縦におさまる範囲が競技エリアとなりました。

 

■コースのコンセプト

1.エリート

 難易度の高いコースをコンセプトにしていますが、下見で見つけた面白い箇所を詰め込んだらテンポが悪く試走して苦しめられたので、2通りの区間を織り交ぜることを考えました。

・ルート選択が複数ある長い区間。CP位置は易しい

・オフトレイルでナビゲーション技術をいかんなく発揮する区間

 

 長い区間ではルートを決めたらスピーディに駆け抜けることが要求され、OMMストレートAのコンセプトに近いかと思います。また、オフトレイル区間も急斜面や藪で極端にタフにならないように心掛け、スリリングなナビゲーションになるように下り方向でのCPへのアタックが多い設定としました。

 

以下抜粋してルート解説です。

赤:小泉選手 青:国沢選手(別ルート部分)

 

1-2 ルートが大きく分かれます。赤.4.4km/up320m、緑.5.2km/up280m、黄.5.4km/up210m など。

赤と黄はほぼ同じで緑はやや遅いでしょう。小泉選手は赤と黄を検討し、赤ほうがナビゲーションがシンプル(黄は市街地で分岐が多く地図読み頻度が高い)と判断しています。なお、赤と緑黄ではCP1から動く方向が異なりますが、S-1の間にプランを立てることで立ち止まって検討する時間を短くできるでしょう。

 

 

2-3 区間前半は上位の選手ルートと東寄りの緑のルートに分かれます。途中からは林道で合流して尾根下りのアタックは同じです。尾根の下りは急に藪になり、本格的なオフトレイルのナビゲーションが始まります。

 

3-4 251ピークのある尾根にどう移るかがポイントになります。西側の鞍部付近を目指し早めに尾根にとりつくのが良いでしょう。ピークからは北東へ尾根たどり東の支尾根への方向転換があります。CP位置は鞍部でわかりやすいです。

 

4-5-6 5は西と東のルートがあります。西ルートはピークある尾根を北進し道に出たら東へアタック。    東ルートは手前の尾根を156m付近で越え、浅い谷から道のある尾根に取りつき最後はトラバースのアタックとなるが高さの把握がやや難しいです。シンプルなのは西ルート。上位2名でルートが分かれました。6はショート区間ですが、地形の連続性がないことに注意する必要があります。このような場所ではコンパスが有効です。

             

10-11 ルートがいくつか思い浮かぶと思います。赤.大高取山経由の尾根下り、緑.中腹のトラバース、平地からの登り返し(さすがにないかな)など。そのうえでここは各チーム尾根下りを選んだようです。トレイルから離れる地点があいまいな上に尾根上部がのっぺりしているので非常に不安になりますが、北側の深い谷の出現を右手に捉え北西⇒西への尾根の方向変換をします。さらに尾根は末端で枝分かれするので、そのまま西へ方向維持を心がけます。怪しくなったら正解の谷の北側の尾根のみが161ピークへと再び高まることを位置特定に利用します。典型的な道のない尾根のナビゲーションで、ここでの技術はいろいろな場所で応用が効くと思われます。

 

11-12 いかにも尾根たどりさせようというプランナーの意図が見えるでしょうが、南北の谷沿いロードからアプローチするルートもあり、ここは実際にルートが分かれました。ちなみにプランナーは芹ケ沢集落経由(緑)も好ルートと考えています。距離はおおよそ以下の通りです。尾根(赤)3.2km 南(青)3.6km 北(緑)3.6km

 

 

13-14 アタック地点やCP位置が難しく、本コース終盤の難関としました。プランナーの考える攻略法を図に示しました。隠れピークや地形の収束点を活用します。

 

小泉選手は昨年設定タイム+24分でしたが今回は+13に短縮しており、本人も手ごたえを感じているようです。そして3回目にしてTMSが初めてチーム完走を達成しました。以下、参考ながらCP16まで時間内1チーム(ふきのとう)、CP15まで1チーム(智隊)でした。

 

 

 

過去2回はオリエンテーリングのトップクラスの選手でないと完走できていませんでしたが、それを打ち破ったのは見事です。このレースを密かに注目しているオリエンテーリング関係者にも少なからずインパクトを与えたと思っています。もちろんオリエンテーリング選手にもスキルを発揮していただきたく、ソロ2位の国沢選手と今回出場されたOMM上位選手の差はやはりナビゲーション技術で、多くの選手はまだまだ磨く余地があると感じたのではないでしょうか。このOMOエリートが刺激しあう場となればうれしく思います。 

2.レギュラー/阿闍梨Cup

先にマーシャルCPを桂木観音周辺と考えていたので、会場からぐるっと一周することでコースの流れは7-8割ほど決まりました。残りの2-3割の選定ですが、西側はトレイル自体が少なく、難易度オーバーのため使用せず、トレイルが整備されていてCPを設定しやすい地形のある東側をメインに使用することにしました。結果的にオフトレイル区間は短くなりCP付近での大きなロスは起こりにくくなりましたが、分岐が多いためマップコンタクトが必要で、ただ走ればよいという区間少なくしています。また、地形が大きいため尾根を一本間違うなどがあるとやはり大きなロスになります。そのリスクを意識できるかについても問う設定としました。

 

 

赤:池選手 青:田濃選手(別ルート部分)

 

1-2 ルートの選択肢がいくつかあります。大高取山を越えても比高はさほど増えないので赤or青ルートでよいでしょう。CP位置は見通しがよいので易しいです。

 

 

2-3 CPのある尾根まで小径を使うか斜面を下るか選択肢があります。南側に似たような尾根があり、先にその尾根へのトレイルの分岐がでてくるので入り込まないように注意が必要です。尾根に入っても多少距離があるので地形の緩急などから現在位置を掴みます。尾根が分岐したところで間の谷に飛び込めればベストです。上位選手は飛び込めていないですが、確信が持てなければ先の分岐などを確認してからでもよいと思います。

 

3-4 谷を横切り登り返した尾根上のCPですが、小径利用と直登の2通りあります。尾根上がやや緩慢な地形のためなんとなく動くと現在地を失いやすいので、コンパス&サムリーディングなどできっちり方向維持と現在地把握することが大切です。

 

4-5 直進、道まわりの2通りがあります。道まわりで分岐を見逃して主尾根まで上がってしまい大きくロスになった方も多かったようです。一方直進では低いほうに流されないように注意しないといけません。池選手は流されてしまったようです。

 

6-7-8 CP7はトラバースでショートカットするとタイムが短縮できます(青ルート)。道から近く易しそうですが見通しが悪いためコンパスをセットして藪の奥の尾根に乗ります。CP8はトラバース道をつなぎ北上し尾根道にでます。赤ルート(池選手)は谷に下ってしまいつつも走力で区間トップタイムですが、青ルートのほうが高低差は少ないと思います。

 

 

8-9 市街地に出るまで2通りルートがあり、学校北のトレイル入口までも車道と弘法山中腹のトレイルの選択肢があります。田濃選手は最短ルートにこだわり、池選手は走力を活かしたルートで持ち味がでています。また、別ルートとして緑ルートがあり、アタックはこちらのほうが多少易しいと思います。

 

レギュラー/阿闍梨Cupとも過去2年に比べ完走率やタイムが大幅に向上しました。やはり多くの方に完走していただきたいのでこれはうれしい結果です。私自身は概ね例年と変わらない難易度で組んだつもりだったのですが、考えられる要因を列挙します。

 

・参加条件をオフトレイルを含んだナビゲーション競技の経験者とした

・参加者自身のスキルアップ

・トレイルが整備されていて枝道に迷い込むリスクが小さく、現在地把握もしやすかった

・それらの要因により、他の選手の動きが見える範囲で移動しながら終盤まで進んだ

 

今回だけではまだはっきりしないのでコンセプトをキープしながら、これは間違いなく参加者のスキルアップだと感じたらクラス分けやコースの難易度についても検討していくかもしれません。

 

 

 

 

 

3回目の開催を終えて、奥武蔵はナビゲーションの宝の山だという思いを強くしました。次の開催地はまだ決まっておりませんが、引き続き宝を発掘していきたいと思います!