リーダー村越の里山アドベンチャーその1

44秒差。四半世紀に及ぶ全日本オリエンテーリング選手権への挑戦の中でも、これほどの僅差が勝負を分けたことはなかった。もし25年前、優勝したターザンのチームリーダー杉山さんと真剣勝負をしていたら、こんな緊迫したレースができたのかもしれない。その結果もさることながら、抜きつ抜かれつのレースのGPS記録は、棋士

ならさしずめ「いい棋譜を残せた」と語るレースであろう。その棋譜を振り返ってみたい。

セクション1:ランニング

 本大会のメインコンセプトはナヴィゲーション。ランニングと銘打たれた最初のセクションだが、大会コンセプトにふさわしいチェックポイント設定がなされていた。CP1、CP2とも難しくないが、道のないかなりの傾斜地のトラバースが必要となる。地図から地形を読み、なおかつ現地の地形に対する正しい感覚が必要となる。

 スタート直後は小走りしていたチームも次第にスピードを落ち着けてきた。道から林道へとショートカットするころには阿闍梨はトップに近い位置にいた。すぐ後ろにはチームターザン、4位?になったマイ・メロディー他数チームが近くにいる。まだ先は長いのだ。無理にペースアップする必要はない。

 林道の終わりから北の尾根をみると、CP1が置かれている傾斜の変換をみることができる。その南の尾根の張り出しには崖っぽいスラブが見え、等高線沿いに高度を維持するのは困難に見えた。林道の直下もガレている。このガレ場を阿闍梨は右に、ターザンは左に巻いた。ターザンはそのまま高度を維持しつつスラブの上部を越えたようだ。CP1についたのはほぼ同時。異なるルートを選びながらタイムがほとんど変わらないという現象はオリエンテーリングでも何回も経験している。これだけの傾斜地で全く異なるコンセプトでもそうなのだということに、しばし感動を覚える。

 CP2へはトラバース後、鞍部にあがり、そこからほぼ直進する。ここではターザンと阿闍梨、それにナヴィゲーションもまあまあできるマイ・メロディーなど3チームが互いに見える位置で進む。直進方向にある沢の中の尾根の張り出しを見逃して、一度そこに登ってしまう。ややタイムロスをし、ターザンに先行を許す。

セクション2:MTB

トランジット後、宮林さんが靴ひも?でトラぶっている間にマイメロディーにも先行を許し、3位でバイクセクションを終える。ここまで概ね90分。

セクション3:山岳ラン

 CP5から4km近い林道で900mまで上がり、そこからが山岳ランの核心部に入る。林道に入った直後、撮影のカメラマンからトップのターザンと数分差だとの情報を得るが、実際には5分以上差がついていたのではないだろうか。

 林道の途中でマイ・メロディーをとらえ先行する。ナヴィゲーションもできるし、体力は十分あるチームなので、林道から山に入る前に離しておきたい。ややスピード

アップしてCP7にいくと重鎮さんがいた。

 市町村界のある主尾根に登ればルートは決まるが、CP7からすぐに尾根に登るか沢でいくかの2通りが考えられる。沢の中はやぶが濃かったが、すぐ南の尾根は林道沿いこそやや藪なものの植林の気配があり、通行の障害もそれほどなさそうだ。すぐ後ろにいるマイメロディーに見られないように、CP7から少し戻った右手から尾根にとりつく。途中小さなガレ場はあったが、藪に悩まされることもなく尾根にあがる。沢ルートを取ったターザンは早々と藪に阻まれ尾根にあがってきたようだ。CP8の高檜山までアップ300m。とにかく高いところにを目指せばよいので、ナヴィゲーション的には難しくない。高檜山直下でやぶがやや濃くなるが、山頂付近でターザンの気配し

元気が回復。

 山頂からは南斜面を意識して、東向きの尾根に乗る。ターザンはすぐそばにいるようだが、こちらが何度か靴ひも結びなどで、小さなロスを繰り返しているうちに、気配は消えてしまった。実際には3-4分ほどの差しかなかったようだが、それでも、200m程度の距離はあったのだろう。この藪山では200mは互いの気配を消すのに十分な

差であった。CP8後の東向きの尾根からCP9のある北向きの尾根には市町村界を通らずにややトラバース気味に出たにもかかわらず、ターザンの気配は現れなかった。ひょっとして抜いているのでは?そんな淡い期待もCP9で彼らのチェック跡を見て、打ち破られる。いったいどのくらいの差がついてしまったのだろうか?焦燥感に駆られ

る時間帯だった。

 CP9のあるピークは平坦な中に地図にないピークがあって、現在地に自信が持てないが、北東への尾根の方向変化とポイントが見えるまでは進むのだ、と考えて進む。

 CP9からの下りはこの山岳ランでもっとも難しい部分である。明確な地形のない藪斜面を、だらっとした東西方向の尾根まで下っていかなければならない。昼間なので、さすがにプレートコンパスを使う必要は感じないが、サムコンパスで方向をセットし、頻繁に見ながら下っていく。1180mくらいまで下った段階でかなり視界が開け、東西方向のだらっとした尾根も見渡すことができた。念のため南斜面を見る位置まで進み、東向きの尾根に乗り進む。後は基本的に高いところを目指して進むだけだ。

 CP11はナヴィゲーションというより、藪に対する忍耐力を試す課題であった。1300mを越えて登りがきつくなったあたりから、藪もまたきつくなる。CP11には電波塔がある。その先は管理道があるだろう。CP11までの我慢。そう言い聞かせて進む。

CP11では思いがけずターザンがいたが、阿闍梨もここで小休止を取り、結局ほぼ3分差のまま山岳ランの後半に進む。尼ヶ禿山からは道もよくなり下り一方、途中玉原湖に下る道の分岐を見るが、距離・高度とも東に道が折れる場所ではなことを確認し、気持ちよく下っていく。CP12に到着すると、トップだと知らされる。ターザンはさき

ほどの分岐で間違えたようだ。


リーダー村越の里山アドベンチャーその2

http://rika.cocolog-nifty.com/ajari/2006/10/2_f176.html

 

リーダー村越の里山アドベンチャーその3(最終)

http://rika.cocolog-nifty.com/ajari/2006/10/3_6770.html